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これからの時代に求められる人になる!ファッションEC入門講座-第5回目-後編
- 2015/11/28
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前編では、Factelier(ファクトリエ)を運営している山田敏夫氏に、「日本のものづくりの現場から世界ブランドを作る」という信念のもと、ビジョンや想いの大切さをお話いただきました。
そんな山田氏が「ブランド」を作り上げるまでにどのような歩みを行ってきたか、続きをお話いただきます。
消えゆく街の力
3大都市圏以外の人口は激減していくと言われています。
日本の国土の6割が過疎地域で、関西、関東、中部の人たち以外の地域は、過疎化が進んで自分たちの故郷がなくなる可能性があります。
世界に誇れる技術を持っている工場の多くが、過疎が進んでいる地域にあります。
こういった消えゆく町がもっている力を、継承できないのはもったいない。だからこそ、私は全国の工場を巡り、インターネットで販売を行うことで、商品に込めた優れた技術を、代わりに届けるお手伝いを行っています。
今私は、1か月の半分は工場に行っています。
工場には場所が必要なため、場所が確保しやすい県庁所在地から1-2時間離れた場所にあります。これまで400工場へ訪問して、30工場と提携しています。
全ての工場が「Made in Japan」の品質に合致する訳ではなく、量販店向けの工場もあれば、世界の有名ブランドの製造を担っている工場もあります。
ビジネスの難しいところは、ビジネスではすべての人をハッピーにすることはできず、共に戦っていける人を選ぶしかないところにあります。ファクトリエでは世界に通用する技術をもった、これから戦っていきたいという工場と提携を進めています。
世界に通用する技術のある工場の情報というのはインターネットではなかなか見つかりません。それはOEMで受託をしていて製造しているブランド名を表に出せない事情があったり、そもそもホームページをもっていないからでもあります。
つい先日和歌山へ出張にいったときも、夜行バスで和歌山まで行き、現地に着いたらタウンページを見て、電話をかけるという泥臭いことをやっていました。こういったインターネットには出ていない工場の情報をファクトリエがもっているというのが強みであり、一番人がやりたくないことをやり続けるのが競合優位性となっています。
いまは締結している30工場の多くは、人口10万人以下の小さな町でやっています。工場を残すことで工場のある町の産業をもう一度復活させたいという想いがあります。
なので、すべての商品に「Factelier(ファクトリエ)by工場名」」というのが書いてあります。
地元に誇りを
ファクトリエでは、テレビに取り上げられること以上に、地元の新聞に大きく取り上げられることを大切にしています。
なぜかというと、地元の新聞の一面に取り上げられると「工場で働いている両親がかっこいい!」となったり、「自分たちの町にすごい技術があったんだ」と気づく機会になったりして、新たな交流が生まれ始めるきっかけとなるからです。
こういった取り組みもあって、地元の工場で働く若い人たちが増えています。
それは地元の有力な新聞に取り上げられることがきっかけであったり、自分たちの工場の名前がついた商品がお客様の手元にとどくことがなによりも嬉しくやりがいを感じるからでもあります。
また、地元の子たちが地元で働くだけでなく、ファクトリエの工場ツアー通して、都市圏にいる人たちも地方の工場にいき、工場で交流を深め、工場で働く楽しみを覚えてもらっています。
工場ツアーの動画
たとえば北上のツアーの例をあげると、北上市に30人もの人がきて駅長さんもびっくりしていました。
このとき北上市がバスを出すなどの協力をしてくれました。北上市がなぜ協力してくれたのかというと、工場ツアーにより人がきます。
人が来るとお昼ご飯であったり、帰りに温泉を寄ったりなど街にお金が落ちるためです。
工場ツアーを開始
ファクトリエと提携した工場は儲かるようになります。
これまでアパレル業界では、値段を発注元が決めていましたが、ファクトリエでは工場に自らが適正な利益を確保できる値段を決めてもらっているからです。
儲かってくると人の採用を検討するようになります。
当初はなかなか人は集まってきませんでしたが、地元のメディアに取り上げられることによって徐々に採用ができてくるようになりました。
しかし、すべてうまくいくわけではありません。4月から新しく工場に働き始めた人たちが、秋以降になると一気にやめるということが以前ありました。
ブランドを作るという響きはいいのですが、実際にやる作業というのは重労働であり、工場の人員は減っていて敷地の半分以上使っていなく電気代もかさむため夏場はクーラーもつけられず厳しい労働環境です。最終的に自分たちの仕事が誰の役に立っているのかわからなくなっていて辞めていくということでした。
工場ツアーをはじめたきっかけ
工場で働く人たちがお客様と交流することで、誰の役に立っているのかを気づいてもらうことでした。
工場ツアーの最後に寄せ書きをお客様に書いてもらっていてとても工場の人を元気付けてくれています。なぜなら、寄せ書きにはお客様の商品にまつわるストーリーがかかれていて
自分たちの作っている商品たちが、「誰かの大切に思い出になりうる」ということが実感できるからです。ファストファッションは誰かの思い出になれない。高級ブランドであったり、作り手の想いのこもった商品でないと誰かの大切な思い出を受け止める器になれないんです。そのことに気づいて何の役に立っているのか、誰の役に立っているのかというのがわかると離職率がぐっと下がりました。
いま、銀座に40坪のショールームがあります。工場ツアーを通して気づいたことのひとつとして、工場の人とお客様の交流をもっともっとする必要があるということです。
毎月1回工場の人を銀座のショールームに呼んでふれあいのコミュニティーの場として様々なイベントを実施しています。
イベントを通じて、工場のこだわりや、商品がどういうふうに作られているのかなど知ることができ、工場の人とお客様が交流する機会を設けています。
Made in Japanの衣食住のメーカーは衣(アパレル)だけでなく、食や住の分野も厳しい状況にあります。なので、地ビールや日本酒の酒蔵を巻き込んで、月の1回は工場のイベント、月の1回は異業種のイベントをやって、衣食住の工場とふれあいの機会をつくっています。
大切なのは職人としての誇りを尊重して継続する仕組みを作るということです。
継続する仕組みというのは、
1.工場直販で工場が儲かる仕組みを作る
2.工場で働きたいと思ってくれる人を増やすためにブランド化をする
3.働き続けてもらうために工場ツアーを実施する
4.工場ツアーにいけないお客様との交流の場を銀座に設ける
というのをひとつひとつ丁寧につくっています。
ブランドを作るためには最低100年かかります。
グッチも100年経っていますし、バカラにいたっては500年も歴史がある
私は第一走者であり、三代目でやっと100年を迎えているでしょう。第一走者としてのどこまで達成すべきか?という目標は置いています。
ブランドの価値を高める
おかげさまで伊勢丹新宿本店でのポップストアのお仕事をいただくことができたり、阪急メンズ東京ではセミナーを実施できたり、Forbesでは新ブランドの旗手として取り上げていただくことができるようになりました。
特に伊勢丹新宿本店でのポップストアでは、高級ブランドと同じ階に出店させていただきました。
自分たちの工場名と高級ブランドがおなじフロアに並んでいるということで、とても工場の人達に喜んでいただけました。
世界ブランドへの道
いまファクトリエは150カ国からアクセスがあります。
日本人が、「Made in Italy」「Made in France」が好きなように、Made in Japanも世界では同等の扱いを受けています。
世界中から「Made in Japan」のクオリティは求められていて世界中で評価されると私は信じています。
2015年8月から海外展開をはじめてすでに34カ国から購入をされていて、今年中に100カ国を目指しています。
「Made in Japan」といえばファクトリエといわれる時代はもうすぐ近くにあると思っています。
2020年の東京オリンピックの選手団のユニフォームをファクトリエで作ること、2020年のモノづくりに携わる就労人口を100万人というのを当面の大きな目標としています。
ビジョン達成に必要な儲かり続けるということ
儲かるということはとても大切で、儲からなかったからいま日本の工場は20年前の10分の1になったわけです。これまでパートナーの工場は下請け体質になっていて、仕事が来なくなる恐怖から赤字の仕事も受注をしていて、20年間工場が稼働しているのに赤字という工場も少なくありませんでした。
ファクトリエはマーケティング志向の企業ではなく、のれん型の企業です。のれん型はお客様を選ばせてもらっていて、
以下の3つの条件をお客様に課しています。
・返品不可
・送料は顧客負担
・発送は即日ではなく1週間後
お客様を選ぶのには理由があります。
私が幼いころ実家の衣料店の手伝いをしていたころ、小売ってしんどい割りになんで儲からないんだろうと思っていました。製造部門は儲かっているだろうとおもって大人になって製造の現場にいくと製造業も儲かっていませんでした。一方で商社は過去最高益を出している。こういったビジネスのあり方を変えないとものづくりは無くなってしまいます。
小売業にしても、日本では毎年40億着つくって、7割の27億廃棄されており消費というあり方を変えていかないといけない。1着あたりの値段は高くても、長く使えるいいものを着て、気分良く暮らしていくほうが幸せじゃないかと私たちは考えています。
こういった価値を伝えて考え方に賛同してくれる方をファクトリエではお客様としていて、お客様は理解者であり、同士であると考えているためです。
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ライフスタイルアクセント株式会社
代表取締役社長
山田敏夫(やまだ としお)
1982年熊本県生まれ。創業約100年の老舗婦人服店の家で育ち、 大学在学中にフランスに留学し、Gucciパリ店に勤務。 2006年にソフトバンク・ヒューマンキャピタルに入社し、 「ITメディア」や「イーキャリア」の営業職として4年間勤務。 最年少でメディア事業本部営業マネジャーになるも退職し、 当時、東京ガールズコレクションの公式通販サイトを運営する「fashionwalker.com」に入社 。最先端のファッションビジネスを経験した後、 2012年にライフスタイルアクセント株式会社を設立。 日本初のファクトリー直販ブランド「Factelier(ファクトリエ)」をオープンした。